原子核の状態方程式解明の道筋をつける

18日のワークショップは、時折雪がちらつく中行われた。

18日のワークショップは、時折雪がちらつく中行われた。

2013年1月4日(金)~31日(木)まで、「原子核の状態方程式」、「ハイペロン」をキーワードに国際モレキュール型研究会が行われました。国内外の研究者50人以上が京都大学基礎物理学研究所に滞在し、1日に1回程度、お互いの研究成果を発表し合って議論を繰り広げました。18日(金)~19日(土)には湯川記念館Panasonic国際交流ホールでワークショップが開催され、約40人の参加がありました。

研究会で研究成果を発表する中村哲(なかむら・さとし)東北大学准教授

研究会で研究成果を発表する中村哲(なかむら・さとし)東北大学准教授

原子核は陽子や中性子などの核子とよばれる粒子で構成されています。多数の核子が集まった中性子星はひとつの巨大な原子核であり、核力で結びついた物質(核物質)と考えることができます。
原子核の状態方程式は、核子密度の変化による核物質のエネルギー変化を定式化したものです。超新星爆発のメカニズムや中性子星の性質、元素合成過程、クォーク・グルーオン相転移など、素粒子や天体現象にまで関わる最も重要な物理量で、いろいろな案が出されていますが、まだ解明されていません。

ハイペロンと中性子星

中性子星の内部にはハイペロンが存在すると考えられている。

また、中性子星内部などの高密度状態では、ハイペロンと呼ばれるストレンジクォークを持つ核子の仲間が存在すると考えられており、ハイペロンと陽子、中性子との間にどのような力が働くかを調べることがとても重要な研究テーマになっています。

2010年に太陽の2倍の質量がある中性子星が観測されてから、原子核の状態方程式に強い制限が課されました。太陽質量の2倍より小さい中性子星しか予言できない原子核の状態方程式はすべて棄却されるからです。中性子星でのハイペロンの効果を考え合わせると、原子核の状態方程式には重力に逆らって核子同士が退けあうような「硬さ」が求められます。

ワークショップで研究成果を発表する大西明(おおにし・あきら)京都大学教授

ワークショップで研究成果を発表する大西明(おおにし・あきら)京都大学教授

研究会、ワークショップでは、J-PARC、JLab におけるハイパー核(ハイペロンを含む原子核)実験の計画・結果、3体力(3つの核子間に働く力)、格子QCDシミュレーションで導き出されたハイペロンの性質など、原子核の状態方程式やハイペロンが関連するいろいろな分野からの発表がありました。それらの発表をもとに、ハイペロンが混じることによって原子核の状態方程式の「硬さ」がどう変わるのか、状態方程式の硬さが観測される中性子星の最大質量にどう影響するのか、ヘリウムや炭素のハイパー核を研究することにより、ハイペロンと核子間の相互作用の詳細を明らかにし、それによって原子核の状態方程式に制限を課すことができるか、などが熱心に議論され、原子核の状態方程式に制限を課す道筋をつけることができました。

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