月刊JICFuSムービー

量子コンピュータを支えるシミュレーション

youtubeico2024.2.22
理化学研究所 計算科学研究センター 白川知功 上級研究員
現代の量子コンピュータ技術は、計算能力の境界を押し広げていますが、ノイズという大きな挑戦に直面しています。このノイズは、量子計算の精度に影響を与え、技術の進歩を妨げる可能性があります。理化学研究所の白川知功氏は、この問題に対処するために、スーパーコンピュータ「富岳」を用いたユニークなシミュレーション手法を開発しています。量子コンピュータとスーパーコンピュータがどのように関わるのか、計算物理学界の新たな地平に、私たちも一緒に目を向けてみましょう!
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計算基礎科学連携拠点(JICFuS)の軌跡

youtubeico2023.3.2
計算基礎科学連携拠点 橋本省二 拠点長
計算基礎科学連携拠点(JICFuS)は、素粒子・原子核・宇宙・惑星物理分野の計算科学をリードする存在として、さまざまな科学的成果を創出するとともに、計算科学推進体制の構築や分野振興活動を行っています。 今回は拠点長である橋本省二教授から、設立からJICFuSのこれまでの軌跡とそこで得られた結果を交えながら解説していただきました。 スーパーコンピュータを中心に進められる、素粒子・原子核・宇宙という壮大なスケールの研究の詳細をお聞きしましょう。
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火星の大気シミュレーションと「富岳」

youtubeico2022.12.5
神戸大学 惑星科学研究センター 樫村博基 講師
20世紀後半以降、天気予報の精度は飛躍的に上昇しました。 これは気象学の発展のみならず、膨大な計算を可能とするコンピュータの登場により、気象を数値的に予測することができるようになったからです。 今では地球上のどこでも明日の天気予報を知ることができます。 それでは、地球のお隣の惑星である火星の天気はどうでしょうか? 神戸大学惑星科学研究センターの樫村博基さんは、スーパーコンピュータを使って火星の天気の研究を行っています。 地球と火星ではその天気にどのような違いがあるのか、またスーパーコンピュータ「富岳」の登場により研究がどのように進展したのか、お話を伺ってみることにしましょう。
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Pcペンタクォークをもとめて―「富岳」でハドロン間相互作用を探る

youtubeico2022.3.7
理化学研究所 iTHEMS 杉浦拓也 特別研究員
素粒子の一種「クォーク」は、複数集まって「バリオン」または「メソン」と呼ばれる状態となって物質を構成します。 通常、バリオンはクォーク3つ、メソンはクォークと反クォークによって作られると考えられるのですが、この枠に含まれない特別な状態を「エギゾチックハドロン」と呼びます。エギゾチックハドロンのひとつにクォークが5つ集まってできるのが「ペンタクォーク」がありますが、とても珍しい状態で現実世界ではめったに見ることはできません。しかし、この特別な状態を詳しく調べることで我々を構成している物質がどのようにできたのか、ひいては宇宙の成り立ちを調べることができるのです。 理化学研究所の杉浦拓也さんはスーパーコンピュータを使ってこのペンタクォークの研究を行っています。 いったいどのような手法が使われているのでしょうか?
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究極のシミュレーションを目指して -ブラックホール を「富岳」で作る-

youtubeico2019.11.15
東邦大学理学部 関口雄一郎 准教授
ブラックホールは光さえ脱出できないほどの大きな重力をもった天体で、太陽の30倍以上の質量の恒星が最期に至る姿であると考えられています。X線による観測でその存在が確認されてから既に40年以上経っていますが、現在でも謎に満ちた天体で、様々な方向から盛んに研究がなされています。東邦大学の関口雄一郎さんは、スーパーコンピュータの中にブラックホールをつくる研究をしているそうです。一体どういうことなのでしょうか?
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QCD相図の完成を目指して

youtubeico2019.3.14
高エネルギー加速器研究機構 青木保道 特任准教授
物理学において、物質や空間などがある状態から別のある状態へ移ることを「相転移」と呼びます。良く知られているものは水の相転移で、水は温度や気圧の変化で氷や水蒸気に状態を変えます。この状態のことを「相」と呼ぶのですが、この「相」が温度や気圧、別の物理的な要因でどのように変化するのかを図示したものを「相図」と呼びます。我々の宇宙の進化の中、物質創生の過程の素粒子レベルで相転移が起こっていたかもしれません。高エネルギー加速器研究機構の青木保道さんはQCD相転移について研究しています。 スーパーコンピュータによるQCD相図の作成とは、いったい何なのでしょうか?その意味と醍醐味を伺ってみましょう。
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X線で非常に明るく輝く星の謎

youtubeico2018.11.29
国立天文台 高橋博之 特任助教
中性子星は太陽と同程度の質量を持っていますが半径が10kmほどしかない天体で、その重力はブラックホールに匹敵するほど強いことが知られています。この強い重力に引かれて周辺のガスが中性子星へ落ちていくのですが、このとき星のX線によりガスの降着が妨げられます。しかし、ガスの量が多いとそれを超えてガスが落ちていき、これを超臨界降着と呼びます。従来、この超臨界降着現象はブラックホールにおいてのみ起きると考えられてきましたが、近年中性子星でも起こることが観測的に分かりその発生のメカニズムが注目されています。高橋さんはこの中性子星での超臨界降着現象の問題について、スーパーコンピュータを用いた数値シミュレーションを駆使して挑みます。
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核力から原子核を解明する ― 核力に基づいた有効相互作用による大規模殻模型計算

youtubeico2018.03.23
東京大学原子核科学研究センター 角田直文 特任助教
原子核を一つの塊にしている基本的な力を核力と言います。この核力を基にして、全ての原子核の状態や運動を記述するのが、原子核物理学の最大の目標です。ところが、陽子と中性子の間に働く核力は、数が多くなるにつれて膨大な計算量を必要とし、スーパーコンピュータを使ってもヘリウムやベリリウムといった軽い原子核が限界です。それ以上の中重原子核の計算はモデルを使って行います。 東京大学原子核科学研究センターの角田直文特任助教は、核力に基づいた大規模殻模型計算を行っています。スーパーコンピュータ「京」ではネオンやマグネシウムまで計算できました。次世代のポスト「京」ではカルシウムや鉄まで計算すべく、アプリケーションの開発を行っています。
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重元素の起源を宇宙に探る

youtubeico2018.03.19
京都大学基礎物理学研究所 西村信哉 特任助教
我々の世界を構成する元素には100を超える種類があります。これらの元素はいったいどのようにできたのでしょうか?それは宇宙の歴史を調べることにつながります。京都大学基礎物理学研究所の西村 信哉(にしむら・のぶや)さんは様々な天体モデルでの重元素合成プロセスをスーパーコンピュータで検証しようと試みています。
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10次元時空から4次元時空へ-超弦理論で初期宇宙のダイナミクスに挑む

youtubeico2017.03.03
高エネルギー加速器研究機構 伊藤祐太 研究員
宇宙の誕生直後に起こったとされるインフレーションとビッグバン。近年の宇宙観測によって、このような急速な膨張が起こったことは確からしいとわかってきた一方で、実際に宇宙初期でどのようなことが起こったのか、理論的予測の検証は困難を極めます。高エネルギー加速器研究機構の伊藤祐太研究員は、超弦理論の立場から、スーパーコンピュータ「京」を使った大規模シミュレーションで、宇宙初期の謎に挑みます。
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銀河をはぐくむダークマターハロー 宇宙論的N体シミュレーションで銀河形成を再現する

youtubeico2016.12.15
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構 大木 平 研究員
宇宙には幾千億ともいわれる銀河が存在しています。銀河の明るさや色、形は様々で、分布も一様ではありません。銀河はどのような進化を経て現在の姿になったのでしょうか。東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構の大木 平(おおぎ・たいら)研究員は、宇宙論的N体シミュレーションを用いて銀河進化の解明を目指しています。 カギを握るのはダークマターです。現在、最も有力な仮説は、ダークマターが重力により集まってハローと呼ばれる塊を作り、その中で通常の物質が集まって銀河が形成されるというものです。スーパーコンピュータの中に10億光年の箱を用意して、ダークマター、通常の物質の順にシミュレーションを行うことにより、銀河進化の謎に挑みます。
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スパコンの中のクォーク-素粒子から原子核をつくる

youtubeico2015.11.12
京都大学基礎物理学研究所 青木慎也 教授
原子核は陽子や中性子で構成されており、電磁気力だけを考えると陽子同士の斥力で一塊にはなりません。それをつなぎとめているのが「核力」です。核力は長い間正体がわかっていませんでしたが、スーパーコンピュータを使った大規模シミュレーション「格子QCD」で、解明の糸口が見えてきました。 京都大学の青木愼也教授、理化学研究所の初田哲男主任研究員、大阪大学の石井理修准教授らは、素粒子物理学、原子核物理学、計算科学の知恵を持ち寄り、「核力とは何か」という難題に取り組んでいます。大規模シミュレーションにより初めて核力を示した研究成果は、2012年度仁科記念賞を受賞するなど高い評価を得ています。 この研究は、計算科学による素核宇宙連携を行う計算基礎科学連携拠点(JICFuS)設立の大きなきっかけともなりました。
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太陽系惑星形成の謎にN体計算でせまる

youtubeico2015.7.13
東京工業大学地球生命研究所 小南淳子 研究員
太陽系には8つの惑星が存在しており、太陽系以外にも1000個を優に超える大量の系外惑星が発見されています。これらがどのように形成されたのか。東京工業大学地球生命研究所の小南淳子研究員は、スーパーコンピュータ「京」を使い、この壮大なテーマにチャレンジしています。 太陽系の惑星は3種類に分類されます。太陽に近い方から順に、硬い地面を持った小さな地球型惑星、ガスをまとった巨大な木星型惑星、そしてガスが比較的少ない氷型惑星です。系外惑星には、この分類に当てはまらないものも存在します。これら多様な惑星が、どのような物理的メカニズムで形成されたのか。数十万個の微惑星を使ったN体シミュレーションで解き明かします。
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超新星爆発シミュレーションの世界

youtubeico2015.3.30
理化学研究所仁科加速器研究センター 滝脇知也 研究員
巨大星の最後の姿、超新星爆発。この現象は肉眼でも見えるほど明るいため、古くから記録が残っています。鎌倉時代初期に書かれた『明月記』には、かに星雲(1054年)など3つの超新星が記録されています。 超新星は長い間、どのように爆発しているかわかっていませんでした。近年、スーパーコンピュータの性能向上、シミュレーション技術の進歩により、その姿が明らかにされ始めています。理化学研究所の滝脇知也研究員がスーパーコンピュータ「京」など様々なスーパーコンピュータを駆使して見えてきた、最先端の超新星爆発シミュレーションの世界をお楽しみください。
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輻射流体シミュレーションで宇宙の歴史を解く

youtubeico2015.1.5
名古屋大学大学院理学研究科 宇宙論研究室〈C研〉 長谷川賢二 助教
ビッグバン直後の宇宙は、電子や陽子などがばらばらに飛び回る電離状態にありました。­宇宙が冷えていくにしたがって電子と陽子が結びつき、約38万年後にはいったん電気的­に中性な原子ができました。その後、銀河や星が形成され、そこから放射される光によっ­て中性原子が再び電離します。これを宇宙再電離と呼びます。このようにして、銀河の形­成史と宇宙再電離は密接に関連しており、これらに注目することで宇宙の進化を読み解く­ことができます。 名古屋大学大学院理学研究科宇宙論研究室(C研)の長谷川賢二助教は、スーパーコンピ­ュータ「京」などを使い、輻射流体シミュレーションによって銀河間物質の電離過程を計­算することで、宇宙再電離と銀河形成史を統一的に理解しようとしています。
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格子QCDシミュレーションで核力の謎に迫る

youtubeico2014.9.3
理化学研究所仁科加速器研究センター 土井琢身 研究員
物質を構成する最小単位である素粒子の一種「クォーク」、そこに働く「強い力」。スー­パーコンピュータを使った「格子QCD」という計算手法によって、それらの性質を知る­ことができます。 QCDは量子色力学(Quantum chromodynamics)とよばれる理論です。たった一つのシンプルな方程式に­より、クォークから陽子や中性子、原子核におよぶ物理の統一的な理解を可能にします。 理化学研究所仁科加速器研究センターの土井琢身研究員は、高エネルギー加速器研究機構­のBlue Gene/Qや筑波大学計算科学研究センターのHA-PACSといったスーパーコンピ­ュータを使い、クォークと強い力の謎に迫ります。
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連星中性子星合体シミュレーションの世界

youtubeico2014.3.31
京都大学基礎物理学研究所 木内 建太 特任助教
非常に高密度な「中性子星」2つからなる連星が合体するときに、何が起こっているのか­。京都大学基礎物理学研究所の木内建太特任助教は、国立天文台のスーパーコンピュータ­「アテルイ」などを用いて、この現象の解明に挑んでいます。 連星中性子星の合体では、さまざまな現象が起こると予想されています。まずは重力波の­発生です。重力波は一般相対性理論の検証に欠かせない、現代物理学最大の関心事の一つ­です。 次は重元素合成。これまで、鉄より重い元素は超新星爆発により合成される説が有力でし­たが、最新の研究では否定的な意見が出始めています。連星中性子星の合体で、太陽質量­の100分の1にも達する大量の物質がまき散らされ、その中で重元素合成が行われるの­ではないかと考えています。 さらに、連星中性子星合体を経由してブラックホールが形成されるといったことも予想さ­れています。
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多体計算の世界 独自の計算法で原子核の謎に迫る

youtubeico2013.10.1
理化学研究所仁科加速器研究センター 肥山 詠美子 准主任研究員

世界最大のシミュレーションでダークマターの正体にせまる

youtubeico2013.4.8
筑波大学 石山智明 研究員
宇宙には、普段われわれが目にする物質のほかに、質量にして5倍ほどのダークマターが存在します。ダークマターの重力進化を解明することは、宇宙の形成過程を明らかにすることにつながります。 筑波大学計算科学研究センターの石山智明研究員を中心とする研究グループは、理化学研究所のスーパーコンピュータ「京」を用いて、約2兆個のダークマター粒子の重力進化の計算に成功しました。1兆粒子を超す規模のダークマターシミュレーションは世界最大であり、専用のアプリケーションを開発した上で「京」全体の約98%を使用し、実効性能5.67ペタフロップス(1秒間に0.567京回計算)を達成しました。この成果により、2012年11月に米国・ソルトレイクシティで開催された国際会議SC12において、計算科学で最も権威あるゴードン・ベル賞を受賞(プレスリリースはこちら)しました。 ダークマターの重力進化の計算は現在も進行中です。完了すると、現存する銀河のダークマターの微細構造や、成長過程が明らかになります。また、ダークマター粒子の観測方法の改良にもつながります。
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