計算基礎科学連携拠点は、2009年2月、計算機を使った基礎科学の研究を精力的に進めている3機関、筑波大学計算科学研究センター、高エネルギー加速器研究機構、国立天文台が合同で立ち上げた研究組織です。連携拠点では、基礎科学の中でも、素粒子、原子核、宇宙物理といった基礎物理の理論的研究を、計算機上で行っています。
近年、私の専門分野、素粒子理論では以下の変化が起きています。私は、クォークの運動を支配する量子色力学(Quantum ChromoDynamics:QCD)を用いて、複数個のクォークが集まって出来ている陽子や中間子などの性質を調べています。QCDは複雑な理論であり、「方程式を紙と鉛筆で計算して解く」ことができません。しかし、ある工夫をすると、計算機を使った数値シミュレーションで問題を解くことが可能になります。陽子の質量や、最近では陽子や中性子の間にはたらく核力と呼ばれる力も、QCDから計算できるようになってきました。
このような研究手法の変化は、原子核や宇宙物理分野でも同様に起こっています。こうして基礎物理と計算機が出合うことで、「計算基礎科学」が誕生したのです。
計算基礎科学の研究には高性能な計算機が必要ですが、高価な汎用計算機でその要求を満たすことは困難です。そこで、我々はしばしば、比較的安価な専用計算機を自ら製作し、研究を進めてきました。自作するには当然、計算機科学者との共同作業が不可欠です。そのためこの拠点には、基礎物理の研究者だけでなく、多くの計算機科学者が参加しています。
計算科学という共通の手法を基盤として、素粒子、原子核、宇宙物理の分野融合を目指す。私は、これを計算基礎科学連携拠点で実現させたいと考えています。
2011年1月
計算基礎科学連携拠点長 青木慎也







