J-PARCで深まる研究者の連携


2月9日(木)から11日(土)の3日間、茨城量子ビーム研究センター(茨城県東海村)で、ワークショップ「Future Prospects of Hadron Physics at J-PARC and Large Scale Computational Physics ~J-PARCで展開されるハドロン物理と大規模計算物理の将来展望~」が開催されました。このワークショップは、J-PARCと大規模計算科学分野で推進される、理論と実験、計算科学の連携を強化することを目的に開催されたもので、海外からの参加者12人を含む、82人の研究者が参加しました。

ポスターセッションの様子

ワークショップでは10人の招待講演者が、J-PARC実験、ニュートリノ原子核反応、計算物理などに関するレビュー講演を行いました。そのほか、国内外の24人の研究者による講演、若手を中心とした15人の研究者によるポスターセッションが行われ、ハドロン物理の具体的な研究内容について活発に議論を繰り広げました。

熊野俊三教授

ハドロン物理の研究を推し進める、理論分野、実験分野、計算科学分野では、それぞれ転機を迎えています。熊野 俊三(くまの・しゅんぞう)高エネルギー加速器研究機構(KEK)理論センター教授は、ワークショップ冒頭のあいさつで、「昨年12月に『KEK理論センター・J-PARC分室』の活動を開始しました。研究会や共同研究が始まっています」と語り、理論研究者が実験研究者と緊密に連携しながらJ-PARCの理論研究を推進していく体制が整ったことを報告しました。

西川 公一郎KEK素粒子原子核研究所所長

西川 公一郎(にしかわ・こういちろう)素核研所長からは、理論と実験の交流を活性化させJ-PARCプロジェクトの発展に貢献してほしいとの挨拶がありました。

永宮正治J-PARCセンター長

実験分野では、J-PARCのハドロン実験施設が修繕され、2012年1月に共同利用を再開しました。永宮 正治(ながみや・しょうじ)J-PARCセンター長は、J-PARC施設が3.11東日本大震災によって受けた被害と復興の様子について講演しました。道路や建物の陥没の写真に、参加者は驚きの声を上げていました。ハドロン実験施設での実験を予定している参加者は、「震災からわずか9カ月で、J-PARCの共同利用が震災前と同じ性能で再開されるのは驚くべきことです。関係者の皆様の努力の賜物だと思います。実験が始められることになり、大変嬉しいです」と語りました。

青木慎也教授

計算科学分野では、今年2月に筑波大学のスーパーコンピュータ「HA-PACS(えいちえー ぱっくす)」が運用を開始し、3月にはKEKのスーパーコンピュータが、秋には京速コンピュータ「京」が稼働する予定です。青木 慎也(あおき・しんや)筑波大学教授は、「これらのスーパーコンピュータを用いて、実験が困難な現象のシミュレーションを行ったり、物理の基本原理からハドロンの性質や反応を計算したりすることによって、ハドロン物理の発展に貢献していきたい」と語りました。

参加した研究者は、「今回のワークショップによって、理論と実験、計算科学の焦点が合い、お互いに刺激し合えました。理論、実験、計算科学の研究者が協力して研究していく機運が高まったと感じました」と、感想を述べていました。

用語解説

J-PARC
J-PARC(Japan Proton Accelerator Research complex:大強度陽子加速器施設)は、日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で茨城県東海村に建設し、運営を行っている最先端科学研究施設です。ハドロン実験施設の他、物質・生命科学実験施設、ニュートリノ実験施設と、それぞれの実験施設にビームを供給するための加速器(リニアック、3GeVシンクロトロン、メインリング)があります。東日本大震災によって大きな被害を受けましたが、2012年1月24日に共同利用を再開しました。
ハドロン物理
ハドロンはクォークが結合してできた粒子で、陽子や中性子はハドロンの一種。原子核の中で陽子や中性子をくっつけているクォーク2個からなる中間子などもハドロンの一種。ハドロン物理では、ハドロンの構造やハドロン間に働く力の法則を研究することで、私たちの体を構成する原子がどのような過程を経て生成されたのか、宇宙誕生直後はバラバラだったと考えられているクォークが、どのようにハドロンに閉じ込められ、現在の宇宙になったのか、などを探求する。
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