東邦大学・関口雄一郎准教授が第12回(2018年度)湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞を受賞

東邦大学理学部の関口雄一郎准教授が第12回(2018年度)湯川記念財団・木村利栄理論物理学賞を受賞し1月23日に授賞式および記念講演が行われました。

記念公演中の関口さん

木村利栄理論物理学賞は、重力・時空理論で大きな功績をあげられた故木村利栄先生(旧広島大学理論物理学研究所教授)を顕彰するために創設されたもので、重力・時空理論、あるいは場の理論、あるいはそれらと関連する分野の理論研究において顕著な業績を上げた若手研究者に贈られるものです。

受賞対象となったのは関口さんの「連星中性子星の合体に対する現実的な素過程を組み込んだ数値相対論シミュレーション」に関する研究です。

2017年に連星中性子星の合体により放射される重力波が初めて観測されたのは記憶に新しいですが、このとき重力波のみならずガンマ線から電波に至る幅広い波長域でこの合体により放射された電磁波が観測されました。特に可視光・赤外線域に多くの観測結果が得られ、ここで得られた結果が数値相対論で得られるシミュレーションでの予想と一致しており、天文学における数値シミュレーションの有用性を示す大きな裏付けとなったのです。関口さんは数値相対論の先駆けとなる計算モデルを独自に発展させ、連星中性子星の合体に対する定量的で観測と比較可能なシミュレーションを世界で初めて実行し、合体にともなう現象、特に質量放出現象と重元素合成に関して理論的な予測を与えてきました。これらの先駆的な研究が認められ、受賞の理由となっています。

今後、日本でも大型低温重力波望遠鏡KAGRAによる重力派の観測が始まり、天文学や物理学における重力波研究は実験と理論の双方で大きな潮流となることが期待されています。そんな中で関口さんの研究は重力波研究の理論的基盤として、今後大いに活躍・発展をしていくでしょう。

関口さんの研究の一部は、文部科学省ポスト「京」重点課題9「宇宙の基本法則と進化の解明」および計算基礎科学連携拠点のもとで実施されました。

詳細は湯川記念財団ホームページをご覧ください。
湯川記念財団:木村利栄理論物理学賞

関口雄一郎氏の受賞コメント
数値相対論を始めたときにはこのような日が訪れるとは思っていませんでしたが、皆がしないようなことを積極的に行ったのが今回の結果に繋がったと感じています。今後は木村利栄賞の名に恥じぬよう、より一層精進して研究を続けたいと考えています。
 

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