大阪大学・鎌野寛之特任助教と理研・池田陽一特別研究員が第20回(2015年)日本物理学会論文賞を受賞


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左から鎌野寛之特任助教(大阪大学核物理研究センター)、池田陽一特別研究員(理化学研究所仁科加速器研究センター)、佐藤透准教授(大阪大学大学院理学研究科)

大阪大学核物理研究センターの鎌野寛之(かまの・ひろゆき)特任助教、理化学研究所仁科加速器研究センターの池田陽一(いけだ・よういち)特別研究員、大阪大学大学院理学研究科の佐藤透(さとう・とおる)准教授が、第20回(2015年)日本物理学会論文賞を受賞しました。早稲田大学で開催された日本物理学会第70回年次大会会期中の3月23日に、授賞式が行われました。

受賞論文
Yoichi Ikeda, Hiroyuki Kamano and Toru Sato, “Energy Dependence of KbarN Interactions and Resonance Pole of Strange Dibaryons”, Prog. Theor. Phys. (2010) 124 (3): 533-539
日本語タイトル:反K中間子‐核子間相互作用のエネルギー依存性とストレンジダイバリオン共鳴極

受賞論文は、原子核に反K中間子(Kbar)※1が束縛されてできる「反K中間子原子核」の研究に関するものです。反K中間子原子核は、存在自体の面白さに加え、中性子星内部のような高密度核物質の物性を探る鍵にもなると期待され、近年、理論的・実験的探索が活発に行われています。
反K中間子原子核は、反K中間子と核子(N)※2の間に生じる強い引力的相互作用(KbarN相互作用)のために、通常の原子核に比べて中心密度が数倍も高くなることが予想されています。論文の中で、量子色力学(QCD)の有効場の理論※3で記述されるKbarN相互作用を用い、反K中間子原子核の“プロトタイプ”である反K中間子1個と核子2個の準束縛状態(ストレンジダイバリオン)が存在する可能性を、Faddeev方程式に基づく三体系厳密計算により定量的に示しました。現在、ストレンジダイバリオンの実験的探索がJ-PARCなど国内外の加速器施設で進められています。この成果は、反K中間子原子核を用いた原子核物理学の端緒を切り開くとともに、その分野形成へ大きく貢献するものです。

本研究は、文部科学省HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」および計算基礎科学連携拠点の協力で実施したものです。

鎌野寛之氏の受賞コメント
このような素晴らしい賞に選ばれることは想像もしなかったので、今回の受賞には大変驚くとともに光栄なことと感じています。受賞対象となったストレンジダイバリオンの実験的探索が現在精力的に行われており、近い将来その存在が実証されるものと楽しみにしています。今回の受賞を励みに、ハドロンやハドロン少数系の構造・質量スペクトルの解明に一層取り組んでいきたいと思います。

池田陽一氏の受賞コメント
日本物理学会論文賞というすばらしい賞を賜り、身に余る光栄です。受賞対象論文は、私自身、大学院博士課程で行っていた研究をまとめたもので、それを評価して頂けたことも同時に大変嬉しく思います。こうした賞を頂けたのも、共同研究者の方々や家族の支えがあったからだと思います。
ストレンジダイバリオンの研究は、現在もなお、有効理論・実験の両面から世界中で活発に行われています。今後は、この分野の発展に格子量子色力学を用いた第一原理計算から寄与していければと考えております。

用語解説

1 反K中間子(Kbar)
ストレンジクォーク1個と反ダウンクォーク1個からなる中間子。正式には、Kの上に「-」(bar)と表記する。中間子の存在は湯川秀樹博士が理論的に予言、後に湯川博士は1949年ノーベル物理学賞を受賞した。
2 核子(N)
原子核を構成する陽子と中性子の総称
3 量子色力学(QCD)の有効場の理論
強い相互作用の基礎理論であるQCDが持つカイラル対称性を指針にして構築された、中間子・核子間の相互作用を記述する場の理論。クォークやグルーオンに代わり、核子や中間子が系の基本的自由度として取り扱われる。
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