ポスト「京」重点課題(9)「宇宙の基本法則と進化の解明」

ポスト「京」重点課題9 公式サイトを公開しました(2016/4/1)

重点課題9の目標

素粒子から宇宙までの異なるスケールにまたがる現象の精密計算を実現し、大型実験・観測のデータと組み合わせて、多くの謎が残されている素粒子・原子核・宇宙物理学全体にわたる物質創成史の解明を目指します。
2020年からポスト「京」の運用が始まり、その5年後、10年後には、宇宙の基本法則と進化に関する人類の理解が格段に深化することが期待されます。ポスト京運用に向けて、素粒子標準模型の検証、超弦理論の探求、素粒子間相互作用の決定、重い原子核構造の決定、爆発的天体現象の解明、宇宙進化の謎の解明などを可能にするシミュレーションコードの開発を行います。

文部科学省 ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題(重点課題)(9)「宇宙の基本法則と進化の解明」

実施機関:
計算基礎科学連携拠点(代表:筑波大学計算科学研究センター)
実施期間:
2015年2 月~2016年3月(調査・準備研究フェーズ)
2016年4 月~2020年3月(本格実施フェーズ)
重点課題責任者:
青木慎也(筑波大学数理物質系/計算科学研究センター客員教授)

実施体制

重点課題9は計算基礎科学連携拠点(JICFuS)が母体となり、連携拠点を形成する8機関のほか16機関の協力により実施されます。
サブ課題A、B、Cを設定し、これらが独立に研究を進めつつ、問題解決の手法や最適化などについて相互に協力して研究を進める体制をとります。また、ポスト「京」開発主体と連携してコデザインの一翼を担います。

代表機関:
筑波大学計算科学研究センター
分担機関:
高エネルギー加速器研究機構、京都大学基礎物理学研究所、理化学研究所仁科加速器研究センター、東京大学原子核科学研究センター、大阪大学核物理研究センター、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構、自然科学研究機構国立天文台、千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター、理化学研究所計算科学研究センター、広島大学大学院理学研究科
協力機関:
北海道大、東北大、会津大、新潟大、原研、早稲田大、慶應大、沼津高専、静岡大、名古屋大、摂南大、広島大、九州大、福岡大

Taiseizu-JICFuS

3つのサブ課題と実施体制

サブ課題A 究極の自然法則と宇宙開闢の解明

素粒子標準模型の検証

SuperKEKBやJ-PARCで行われる素粒子の精密実験に呼応して、相補的な役割を果たす精密計算を実現し、素粒子標準模型を検証します。格子量子色力学(格子QCD)の大規模数値シミュレーションなどにより、素粒子反応における標準模型からの寄与を精密に求めることが鍵となります。標準模型からのずれが見つかれば、新しい物理法則発見への手がかりとなります。

宇宙開闢の謎に迫る

究極理論の候補とされる超弦理論のシミュレーションにより、宇宙開闢の謎に迫ります。

分担機関:
高エネルギー加速器研究機構(KEK)
サブ課題責任者:
橋本省二(高エネルギー加速器研究機構 教授)

 

Taiseizu-JutenA

サブ課題B 物質創成史の解明と物質変換

物質創成・変換過程を理解

バリオン間相互作用、原子核の構造と反応、超新星爆発・中性子星連星合体という素粒子現象から天体現象までをシミュレーション研究でつなぎます。物質創成・変換過程を理解し、未解決の基礎科学現象の解明を目指します。

素粒子、原子核、宇宙-3つの階層

第一階層では、量子色力学(QCD)の数値計算により、ハドロン間相互作用を精密に求め、さらに核物質の状態方程式を決定します。第二階層では、重元素合成に関わる原子核の構造計算を行います。核変換技術に必要となる基礎データの取得により、核廃棄物処理へ向けた応用にもつながる可能性があります。第三階層では、ニュートリノ、磁場、一般相対論などの必要な要素をすべて取り入れた超新星爆発および中性子星連星合体のシミュレーションを行い、未解決である重元素の合成過程を探求します。

大規模実験・観測との協力

ポスト「京」と同時代に稼働が予定されている大規模実験・観測計画(J-PARC、RIBF、KAGRA、TMT など)に必須の理論的予言を与え、これらのポテンシャルを最大限に引き出すことを可能にします。

分担機関:
京都大学基礎物理学研究所、理化学研究所仁科加速器研究センター、東京大学原子核科学研究センター、大阪大学核物理研究センター
サブ課題責任者:
柴田 大(京都大学基礎物理学研究所 教授)

 

Taiseizu-JutenB

サブ課題C 大規模数値計算と広域宇宙観測データの融合による宇宙進化の解明

宇宙の階層的構造形成と銀河形成、ブラックホール進化を融合した大規模計算を行い、宇宙創成はじめの10億年の進化過程が理論的に明らかになります。
さらに、すばる望遠鏡などから得られる膨大な広域観測データを統計解析し、ダークマターの粒子質量に下限を与え、ダークエネルギーの状態方程式を含む主要宇宙論パラメータを精密決定します。観測データと大規模計算を融合したビッグデータ宇宙論を展開し、宇宙進化史を解明します。

分担機関:
東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構、国立天文台、千葉大学ハドロン宇宙国際研究センター、計算科学研究機構
サブ課題責任者:
吉田直紀(東京大学大学院理学系研究科 教授)

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