開催報告:第8回 HPC-Phys 勉強会

2020年9月24日(木曜)に第8回HPC-Phys勉強会が開催されました。この勉強会は前回に続き、理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)共催のオンライン開催です。参加登録は講演者含めて 41名、画面上で確認できた参加者は同じく 33名です。

今回は、6月にランキング4冠を達成した富岳の関係者で、とくにランキング関わるプログラムを用意された方に講演をお願いしました。

1つ目の講演は、HPL-AI 用のプログラム作成に関わった、R-CCS の工藤周平さんです。近年、AI の分野で計算の精度を半精度(有効精度が10進数で4桁程度)まで落として速度を稼ぐ手法が広まってます。この半精度を用いた計算速度を競うのが HPL-AI のベンチマークで、今回が記念すべき一回目のランキングです。半精度の計算回路は通常の CPU には備わっていないので AI の計算は GPUが強いのですが、実は富岳の CPU にも半精度の計算回路が備わっており、ランキングでは 1位に輝きました。HPL-AI の問題そのものはある種の密行列で与えられる(大規模な)連立一次方程式を解くもので、専門家の手にかかるといわゆる「やるだけ」だったようです。半精度ならではの有効数字の少なさや表現できる数値の範囲の狭さに応じた工夫などの話がありました。また、非常に大規模な並列計算なので、通信が足を引っ張らないための工夫も施したとのことです。

2つ目の講演は、Graph500 用のプログラムを用意した R-CCS の中尾昌広さんです。中尾さんには第1回 HPC-Phys 勉強会でご講演いただいているので、2回目の登場となります。Graph500 の問題は、与えられたグラフ(棒グラフや線グラフでなく、ノード(点)とそれを結ぶエッジ(線)からなる図形)を探索するというものです。どこか1点からはじめてエッジで繋がった点に印を付けていき、全ての点に印を付け終われば終了です。1秒間に、何個のエッジ(に繋がった点)を探索できるかが性能の指標になります。この勉強会の参加者は計算で「探索」を用いることがあまりないので、探索アルゴリズムの解説から始まって、富岳向けの施したチューニングの話がありました。HPL-AI でもそうですが、通信部分の高速化は重要とのことで、講演の中ででてきたノウハウには物理の並列計算にも役立ちそうなものもありました。

講演直後の質疑応答時間に加えて、議論の時間にも活発な議論がなされました。今回は講演者がお二人とも計算機科学が専門で、物理分野の参加者とお互いに情報交換する良い機会となりました。また、共催ということもあり R-CCS の計算機科学の専門家も出席するなど、幅広い参加者が集まりました。

なお年度内は12月3日(第9回)、2月4日(第10回)にオンラインでの開催を予定しています。

講演資料は勉強会 web site
http://hpc-phys.kek.jp/
をご参照ください。

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