開催報告:第4回 HPC-Phys 勉強会

2019年8月26日に理化学研究所計算科学研究センターで第4回HPC-Phys 勉強会が開催されました。この勉強会は計算基礎科学連携拠点(JICFuS)およびポスト「京」重点課題9「宇宙の基本法則と進化の解明」と理化学研究所計算科学研究センター(R-CCS)の共催です。

この勉強会も、第1回(2018年8月)から1年経ち、4回目となりました。冒頭では世話人の金森さんから改めて趣旨説明と、JICFuS内の隠れ人気サイトである「高性能計算の扉」の紹介がありました。数値計算では、何らかの線形方程式、固有値方程式を解くことに帰着する問題が多くあります。講演は、これらの問題を解くプログラム(ソルバー)に関する特集となりました。最初の講演では、会場となった理研計算科学研究センター(R-CCS)の今村俊幸さんが、スパコンの「富岳」で使えるライブラリと、「京」での大規模固有値ソルバーEigenExaの話をしてくださいました。EigenExaを用いた例として、同じくR-CCSの上田宏さんから角転送行列繰り込み群の計算手法のについての講演がありました。多数のスピンが集まった系の取扱に有効だということです。これらは大規模な行列(とくに密行列)の固有値と固有ベクトルをもとめる話ですが、後半は、線型方程式を解く(逆行列を求めるとほぼ同義)ことに関する講演がありました。早稲田大学の大川博督さんの講演では、対象は非線形方程式なのですが、うまく線型方程式に帰着して解く手法の紹介がありました。超新星爆発のシミュレーションに用いるそうです。高エネルギー加速研究機構(KEK)の滑川さんの講演では、係数行列が疎行列(要素にゼロがたくさんある行列)の場合に線型方程式を解く様々なソルバーの紹介がありました。クォークの相互作用の記述に必要とのことです。最後にプログラムにはなかったのですが、滑川さんの講演で出てきたKEKにあるスパコンについて、KEKの青山龍美さんから簡単な紹介がありました。

休憩時間には、希望者を対象に約7年の運用を2019年8月16日で終えた「京」コンピュータを見るツアーがありました。京を見れるのはこれで最後ということもあり、半分以上の方が参加して思い思いに写真を撮るなどしていました。また懇親会は、三宮に会場を移して次にこの勉強会で取り上げたい内容で盛り上がったり、普段触れる機会のない分野の研究者の言葉に耳を傾けたりしました。

参加者は、会場に来た25名に加えて、前回に引き続き試験的に繋いだ早稲田大学会場に3名の計28名でした。

参加者で勉強会のアドバイザーの一人である松古さんからは「普段あまり聞けないような話が新鮮だったり、何度も聞いた内容を別の切り口から理解できたりするので、毎回楽しみにしています。異なる分野の方とアルゴリズムや計算法を軸に議論することは、考え方の幅を拡げる良い機会だと思っています。他分野にもわかりやすく説明して頂いた講演者の皆様にとても感謝しています。」とコメントをいただきました。

講演資料は勉強会 web site
http://hpc-phys.kek.jp/
をご参照ください。

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