標準模型ver2を作りたい-KEK-FFワークショップ


140213-15kek-ff2014年2月13日(木)~15(土)に高エネルギー加速器研究機構にて昨年に続き3回目となる「KEK Flavor Factories (KEK-FF) workshop 2014」が開催され、国内外から100人の参加がありました。

物質を構成する最小単位、素粒子と素粒子に働く力は標準模型にまとめられています。
標準模型で、クォークはアップ・クォークからトップクォークまでの6種類、電子やニュートリノの仲間レプトンも、電子、ミュー粒子、タウ粒子とそれぞれに対応するニュートリノの6種類です。そうしたクォークやレプトンの種類の違いを「フレーバー(香り)が異なる」と表現します。フレーバー・ファクトリー実験とは、特定の種類のクォークやレプトンを大量に生成してその性質を精密に調べる加速器実験です。

2012年に欧州合同原子核研究機関(CERN)でヒッグス粒子が発見され標準模型のすべてのピースが埋まりました。しかし、素粒子のすべてが分かったわけではありません。標準模型では、素粒子クォークがなぜ3世代あるのか説明できません。また、これまでの加速器実験で求められたCP対称性の破れ※1の測定値は、現在の宇宙にある物質の量を説明できません。これらの謎を説明するための様々な模型がすでに考え出されています。

どの模型が正しいのかは、フレーバー・ファクトリー実験で確かめることができます。標準模型でおこりえない反応を検出したり、標準模型から導き出される値と異なる値が測定されたりすれば、新しい模型に制約をかけることができます。
このワークショップに参加した研究者たちは、フレーバー・ファクトリー実験によって新しい模型を淘汰することにより、標準模型ver2を作り出そうとしています。

そのためには標準模型から導き出される値を精密に求める必要がありますが、容易ではありません。強い力が作用するクォークの反応は紙と鉛筆で解けないのです。そこでスーパーコンピュータを駆使した格子QCDでのシミュレーションを用いて標準模型から導き出される値を精密に求めています。

今回の研究会では、1999年から2010年までKEKで行われたBelle実験※2、欧州合同原子核研究機関(CERN)のLHCb実験での成果の発表がありました。
両者はどちらもボトムクォークを含む粒子・反粒子を大量に生成するフレーバー・ファクトリー実験です。これらの成果から標準模型を越える模型に制約がかかりました。

またBelle実験の後続のBelleⅡ実験は2015年度に開始されました。
標準模型では許されないミューオンの稀な崩壊を探ることにより、超対称大統一理論を実験的に検証することを目指すCOMET実験なども現在準備中です。
これら準備中の実験でどのシグナルを捕らえればいいか、理解が深まりました。

ワークショップで行われた研究者間の活発な議論が今後の研究に生かされていくことでしょう。

用語解説

CP対称性の破れ
ひとつの物理現象とそれを「CP反転」させた現象の間に違いがあることを意味しています。「CP反転」は物質を反物質に変える役目をするので、その破れは物質と反物質の振舞に違いを引き起こします。
Belle実験、BelleⅡ実験
Bファクトリー加速器(KEKB)によって電子を80億電子ボルト(8GeV)、電子の反粒子である陽電子を35億電子ボルト(3.5GeV)まで加速し衝突させ、大量のB中間子、タウ粒子やチャーム粒子を生成し、その崩壊現象をBelle測定器により検出することで、粒子・反粒子の対称性の破れや新しい物理法則を探究する実験。
1994年より建設が始まり、1999年から2010年まで約10年にわたり世界最高の性能で実験が続けられました。2001年には、B中間子と反B中間子の対称性の破れを発見し、小林・益川理論の検証を行うなどの成果をあげました。
現在、Belle実験は、世界15の国と地域からの約60の大学・研究機関に所属する約400人の研究者が参加する国際共同チームにより建設・データ収集および物理解析が行われています。2010年夏より、後続のBelleⅡ実験に向け、加速器のビーム衝突性能を40倍増強するための改造が始まり、来年度からの運転開始を目指しています。BelleⅡ測定器もより高いビーム強度に対応するための改造が行われています。
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