開催報告:国際シンポジウム「クォークから宇宙まで」および市民講演会

2015年11月4日(水)~8日(日)に奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~において、国際シンポジウム「クォークから宇宙まで」(QUCS2015)および市民講演会を開催しました。シンポジウムには国内外の研究者131名が参加。11月7日(土)の市民講演会は一般の方78名にお越しいただきました。シンポジウムQUCS2015は、文部科学省HPCI戦略プログラム分野5「物質と宇宙の起源と構造」(平成23~27年度)の最終報告会として開催しました。

11月5日、奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~にて

11月5日、奈良春日野国際フォーラム 甍~I・RA・KA~ 庭園にて

Zoltan Fodor 氏はQCD、Higgs、QEDが体重に及ぼす割合を、自作の体重計を使って説明した。

Zoltan Fodor 氏はQCD、Higgs、QEDが体重に及ぼす割合を、自作の体重計を使って説明した

国際シンポジウム「クォークから宇宙まで」(QUCS2015)は5日間にわたり、毎日9時から18時までみっちり行われました。口頭発表はのべ88件、ポスター発表は13件あり、活発な議論がされました。
初日は、HPCI戦略プログラム分野5の統括責任者、研究開発課題責任者による5年間のプログラムの成果報告から始まりました。成果や進捗だけでなく、今後の方針なども示されました。その後は夕方まで、招待講演を含む口頭発表が行われました。会場の能楽ホールはとても日本的ですばらしく、外国人研究者にも気分よく発表をしていただきました。

東京大学 清水則孝氏清水氏に質問する外国人研究者

発表後の質疑応答でも活発な議論が繰り広げられた

ポスターセッションでも活発な議論が繰り広げられた

ポスターセッションでも活発な議論が行われた

2日目以降は個別の研究発表があり、午前中はメイン会場のみ、午後は複数の会場を使って多くの口頭発表が行われました。2日目の夜には飲食をしながらのポスターセッションもありました。休憩時間やランチタイムも、発表内容をもとにした議論があちこちでなされ、内容の濃いシンポジウムとなりました。
盛況のうちに幕を閉じたシンポジウム。最終日は午前中のみ、しかも日曜日とあって、午後は奈良を観光したり、おみやげを見て回ったり、観光シーズンの奈良を満喫しました。

大学生時代に湯川秀樹と道ですれ違ったエピソードを話した

初田哲男 氏

シンポジウム会期中の11月7日(土)に、市民講演会「「計算」から見える素粒子・原子核・宇宙の世界」を開催。3人の講演者が「計算」の視点から、素粒子・原子核・宇宙について語りました。主催のHPCI戦略プログラム分野5からは、初田哲男・理化学研究所主任研究員、後援のポスト「京」重点課題9からは、吉田直紀・東京大学大学院教授、ゲストとして地元の橋本幸士・大阪大学大学院教授に、それぞれ40分間の講演をいただきました。

超高解像度のシミュレーションで、100万光年の広がりの中に太陽半径の10倍ほどの原始星が誕生することを示した。

吉田直紀 氏

一人目の初田主任研究員は、素粒子や原子核の基本的なことがらを説明しつつ、戦略プログラムにおける最新の成果をちりばめながらのお話でした。二人目の吉田教授はシミュレーション結果を元にしたムービーを紹介するなどして、宇宙の神秘や広大さを感じさせてくれました。最後の橋本教授は理論家の立場から、理論vs計算を講演の軸に、超弦理論などの究極理論にどのような手段で迫っているかを面白く解説していただきました。ちなみに、理論と計算の勝負は「引き分け」とのことでした。

スパコンを用いなければ結果を得られないQCDに、超弦理論を応用して手計算で挑んでいる。

橋本幸士氏

来場者アンケートによると、学生、50代、60代が中心。奈良だけでなくとなりの大阪からも多くお越しいただき、中には関東から足をのばしてくださった方もいらっしゃいました。3つの講演の内容や難易度についてはいずれも5段階の4.5付近という高評価で、講演会全体についてはアンケート回答者全員が最高評価をつけるという結果となりました。参加いただいたみなさま誠にありがとうございました。

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