プレスリリース:宇宙の大規模構造の複雑な統計パターンを高速予言する人工知能(AI)ツールを開発

宇宙の大規模構造の複雑な統計パターンを高速予言する人工知能(AI)ツールを開発
―宇宙ビッグデータのAI分析に向けて―

概要

京都大学基礎物理学研究所西道啓博特定准教授兼東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)客員科学研究員)、Kavli IPMU高田昌広主任研究者、弘前大学、国立天文台、名古屋大学の研究者からなる共同研究チームは、現在の宇宙で観測される銀河の大域的空間分布に見られる「網の目構造」の起源を調査するために、国立天文台のスーパーコンピュータ 「アテルイ」及び 「アテルイII」を用いて、大規模な宇宙の構造形成シミュレーションを実行しました。ダークマター、ダークエネルギーなどの宇宙の組成、またインフレーションモデルが予言する宇宙の初期条件に関するパラメータが構成する多次元空間から101個の代表点を選び出し、これら全てを網羅するシミュレーション群を実行することで、大規模なデータベースを構築しました。さらに、このデータベースを分析するAIフレームワーク「ダークエミュレータ」を開発し、「任意の」宇宙モデルにおける宇宙の大規模構造の観測量を正確かつ高速に計算することに成功しました。ダークエミュレータを用いることで、スーパーコンピュータでは数日かかる理論予言を、元々のシミュレーションの結果と遜色のない精度を保ちながらもノートパソコンで数秒以内に計算することが可能になります。これは計算コストをおおよそ1億分の1に低減したことになり、実観測データから宇宙の根源的な情報を引き出す操作を飛躍的に高速化することを可能としました。

本研究には重点課題9サブ課題Cメンバーの吉田直紀教授と大木平特任研究員が参加しています。吉田教授から「大規模シミュレーションデータベースと機械学習を組み合わせて最先端の精密宇宙論のデータ解析が可能になり、「エミュレーション」という新たな研究手法を開拓することができました。」とコメントをいただきました。

この研究成果は、米国天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』に2019年10月8日付けで掲載されました。

(Credit:京都大学基礎物理学研究所)

本研究は、科学技術振興機構CREST (JPMHCR1414、代表吉田直紀)、科学研究費補助金新学術領域研究「なぜ宇宙は加速するのか?-徹底的究明と将来への挑戦-」総括班(15H05887、代表村山斉) 計画研究(15H05892、代表宮崎聡、15H05893、代表高田昌広)、文部科学省ポスト 「京」重点課題9 「宇宙の基本法則と進化の解明」および計算基礎科学連携拠点JICFuS)、科学研究費補助金若手研究(B) (17K14273、代表西道啓博)の援助を受けています。

詳しくはKavli IPMUおよび京都大学のプレスリリースをご覧ください。
Kavli IPMU:https://www.ipmu.jp/ja/20200205-DarkEmulator
京都大学:http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/191008_2.html

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