ハドロンの豊かな存在形態を探る-「素核宇宙融合」×「新ハドロン」クロスオーバー研究会

「新学術領域「素核宇宙融合」×「新ハドロン」クロスオーバー研究会-多彩なフレーバーで探る新しいハドロン存在形態の包括的研究-」が、2012年7月12日~13日、名古屋大学ESホールにて、HPCI戦略プログラム分野5の共催で行われました。2日間の参加者は、31人の講演者を含めて75人でした。

このクロスオーバー研究会は、昨年に続き2回目。素粒子と原子核の研究者が、最先端の研究成果の情報交換と、共同研究の手がかりを議論することを目的としています。格子QCDによる数値シミュレーション、J-PARCやSPring-8、Bファクトリー実験など多様なアプローチで、ハドロン物理の理解を目指します。

ハドロンには主に、陽子や中性子に代表される「バリオン」と、「メソン(中間子)」があります。バリオンは3つのクォークからなり、代表的な陽子はuクォーク2つとdクォーク1つでできています。現在は、新しいハドロン存在形態ということで、バリオンを構成するクォークを別の種類に変えたもののほか、クォーク数が4つ以上の粒子についても研究が進められています。

クォーク6つからなる粒子をダイバリオンと呼び、その構造には2つの可能性があります。クォーク6つが結合したものと、クォーク3つのバリオンが2つ結合したバリオン分子と呼ばれるものです。この中で、クォーク6つの「Hダイバリオン」について複数の報告があり、シミュレーション結果からも、実験結果からも、存在する可能性がより高まったといえます。

その他、ほんの1週間前に大きな話題となった「ヒッグス粒子」については、素核宇宙領域代表者の青木慎也・筑波大学教授が開催挨拶でふれ、講演の中でも述べられました。

研究会では、講演や議論が長引いて予定時間をオーバー、講演を遮っての質問やコメントもあり、しかし、それだけに真剣な議論が交わされました。ランチタイムにも、「あのやり方はすごいよね。うちでも使ってみたらいいんじゃないかな」といったコメントも聞かれ、非常に有意義な分野融合研究会となりました。

今回の研究会の世話人である名古屋大学素粒子宇宙起源研究機構の飯嶋 徹教授は、「格子QCD分野からの参加者が多く、とても密な議論ができました。とくにLHCで『ヒッグス粒子』が発見され、新物理の兆候がないとすれば、今後は一人ひとりが物理をよく考えて新しい価値観を作り出していかなければなりません。そのためには、このようなクロスオーバー研究会が必須です。ぜひまた機会を設けてやりたいと思います」と述べて締めくくりました。

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