原子核理論研究の最前線-素核宇宙融合レクチャー「原子核殻模型の基礎と応用」

年が明けてすぐの1月11日(水)~12日(木)、京都大学基礎物理学研究所で、素核宇宙融合レクチャーシリーズの第4回「原子核殻模型の基礎と応用」が行われました。講師は東京大学原子核科学研究センター(CNS)特任助教の阿部 喬さん。教室がいっぱいになるおよそ30人の参加があり、分野を越えた活発な議論が行われました。

まず、世話人の青木慎也・筑波大学教授から「このレクチャーシリーズはおもに非専門家向けに行っており、講師の方には他分野の研究者にもわかるようお話しくださるようお願いしています。分野外の方からもどんどん質問してください」とのあいさつがありました。

講師の阿部さんは「講義スライドの準備に充てようと思っていた年末年始が研究で埋まってしまい、準備が十分ではないかもしれませんが」と前置きしつつも、2日間の目標を「原子核の殻模型や第一原理計算とは何かを(なんとなく)知ってもらうこと」としてレクチャーが始まりました。

初日は原子核とは何かをイントロダクションとして話した後、原子核シミュレーションで使用する殻模型について話しました。2日目は、阿部さんの専門である第一原理計算について話がありました。イントロから「魔法数」を入口に議論が活発化し、1スライドごとに質問が飛び交う一幕もあるなど、内容の濃いレクチャーとなりました。素粒子理論を専門とする青木教授は「対角化(計算手法)と相互作用(物理)の双方に課題があって大変だということがよくわかりました」とコメントするなど、分野外の研究者からの評判も上々でした。

講師の阿部さんは「今までに非専門家向けという機会はなかったので、レクチャーをする側としても改めて基礎を見直すきっかけとなり、大変勉強になりました。多くの方々から質問があったのもありがたかったです。今後の研究に活かしたいと思います」と2日間を終えての感想を語りました。

この素核宇宙融合レクチャーシリーズは、分野融合を目的の一つとする新学術領域研究「素核宇宙融合による計算科学に基づいた重層的物質構造の解明」およびHPCI戦略プログラム分野5の共催で行われました。分野を学び始めた大学院生や他分野(素粒子、原子核、宇宙物理)の研究者など非専門家向けのもので、最終的にはシリーズをまとめて「素核宇宙融合教科書」の制作が予定されています。

第5回は2月27日(月)~28日(火)に理化学研究所(和光)で行います。講師は船木靖郎さん。タイトルは「原子核クラスター構造とガス的量子凝縮状態」です。ご興味のある方はぜひご参加ください。

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