競争が激化するHPCの将来を見据えて-京シンポジウムおよび戦略5分野合同ワークショップ

350席の会場が満員です。

「京コンピュータ・シンポジウム2012および第2回戦略プログラム5分野合同ワークショップ ~「京」を中核とするHPCIの発展に向けて~」が、2012年6月14日~15日、神戸大学統合研究拠点コンベンションホールにて開催されました。

9月から共用開始が始まるスーパーコンピュータ「京」。初日のシンポジウムでは、共用に向けた「京」の整備状況、HPCIの現状、今後の日本社会の展望などの講演がありました。2日目のワークショップでは、各戦略分野から現状と今後の計画についての報告があり、最後に分野間連携の取り組みについてパネルディスカッションが行われました。2日間の参加者は、講演者を含めて389人でした。

14日のシンポジウムでは、主催者あいさつの後、文部科学省の森本 浩一(もりもと・こういち)大臣官房審議官から政策講演がありました。スーパーコンピュータは国家存立の基盤であり、継続的な開発が必要です。そのためには「京」のようなフラッグマシンが必須となります。これまでスパコン開発は日米に限られていました。しかし、中国、ロシア、インドなども加わり、競争は激化しています。森本審議官は、「情報を制する者が世界を制する。日本が国際的なプレゼンスを高めていくためにもHPCIの推進は不可欠」と締めくくりました。

続いて、HPCIコンソーシアムの宇川 彰(うかわ・あきら)理事長がHPCIの意義と展望について講演しました。HPCIコンソーシアムは、計算科学技術コミュニティの幅広い意見を集約し、推進・実現を図ることを目的とします。1990年代、日本のスパコン開発力は世界屈指でした。しかし当時を振り返ると、必ずしも計画的・持続的観点があったとは言い難い状況がありました。そのような経緯を踏まえつつ、日本の計算科学技術発展のためにコンソーシアムの活動を行っていくとのことでした。

ポスターセッション表彰式。右から2人目に最優秀賞を受賞したWang Xianさん。右端が審査委員長の小柳義夫・神戸大学特命教授。左端は計算科学研究機構の平尾公彦機構長。

ポスターセッションをはさんで、理化学研究所次世代スーパーコンピュータ開発実施本部の渡辺 貞(わたなべ・ただし)プロジェクトリーダーから「京」の整備状況の説明がありました。その後、東京大学大学院情報学環の古村 孝志(ふるむら・たかし)教授から、東日本大震災でがらりと変わった地震・津波予測および防災について講演がありました。当日の津波の映像や、震災後1年3カ月の間に作成されたシミュレーション動画・画像が多用され、強く印象に残る講演でした。

シンポジウムの最後は、三菱総合研究所の小宮山 宏(こみやま・ひろし)理事長が、自ら提案するビジョン「プラチナ社会」の実現に関する講演を行いました。21世紀の世界は、爆発する知識、有限の地球、高齢化する社会といったキーワードで語ることができます。20世紀に衣食住・移動・情報を手にした先進国ですが、21世紀にはこれが地球上に行き渡ります。その先に人類が欲するものを実現した社会を「プラチナ社会」と定義し、その条件として、エコ、老若男女の参加、心も豊かに成長、といったことをあげました。

パネルディスカッション。手前はモデレータの石川 裕・計算科学研究機構チームリーダー。

15日の合同ワークショップでは、戦略プログラム5分野からそれぞれ進捗状況と今後の計画について発表がありました。昼休み前にはポスターセッションの表彰式があり、22のポスターのうち4人が表彰されました。最優秀賞は、中国西安交通大学のWang Xianさん。TSUBAME 2.0を用いて、東京の広いエリアの風の流れを2mの分解能でシミュレーションしました。

2日間の最後は、分野間連携の取り組みについてパネルディスカッションが行われました。量子多体系で分野2と分野5が、原子力施設など大型プラントの耐震・安全性評価で分野3と分野4が具体的な連携を行っていますが、まだ十分ではないというのが共通認識です。計算科学と計算機科学との連携については、各分野で連携の度合いはさまざまです。

計算科学研究機構の平尾 公彦(ひらお・きみひこ)機構長は、「計算科学と計算機科学の連携は進みつつあると思っています。遅れているのは計算科学同士です。難しいことだと思いますが、どこかでブレークスルーがないと厳しい」と、より一層の努力が必要と締めくくりました。

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