宇宙分野と素粒子・原子核分野の相互理解が深まる-第7回素核宇宙融合レクチャー

素粒子研究者からの質問に丁寧に答える岡本准教授

2012年11月20日(火)~21日(水)に、神戸大学統合研究拠点にて素核宇宙融合レクチャーシリーズ「銀河形成とダークマター」が開かれました。第7回目となる今回は、筑波大学計算科学研究センターの岡本 崇(おかもと・たかし)准教授が講師を務めました。本レクチャーが大学院生や他分野の研究者など非専門家向けということもあり、素粒子物理、原子核物理の研究者を中心に、22人の参加がありました。

レクチャーは、岡本准教授が研究する宇宙分野の基本的知識の説明から入りました。続いて分野の背景・動向を経て、岡本准教授の研究のねらい、理論的背景、計算機シミュレーションの計算手法、課題、展望と順番に説明していきました。

2日目。レクチャーがまとめに入る。

2日間4時限で行われた中で、初めのころは、他分野の研究者が多かったためか物理的直観を教えてほしいという種類の質問がよく出ました。また、分野の慣習の違いに起因する質問も出されました。
たとえば、ビリアル平衡の説明で出された「緩和」という用語。素粒子・原子核分野では、2つの系が混合するときに、全体を見ても細部のどの領域を見ても完全に混ざった状態を指します。ところが、宇宙分野で緩和というと、たとえば2つの銀河が衝突したとき、それぞれの恒星が全体的におおまかには混ざっており、時間変化が小さくなって落ち着いた状態を指します。このことを講師と受講者が理解するのに少し時間を要しましたが、議論したことで相互理解が深まり、有意義な時間となりました。


ボロノイ図(出典:Wikipedia, Image Credit: Maksim)

計算手法の解説では、他分野の研究者が自分たちの研究のヒントになるかもしれないと、とくに真剣に聞き入りました。メッシュをいかに区切るかは、どの分野でも大きな課題となっており、ボロノイ分割を利用したMoving mesh法には質問が集中しました。この方法は従来の方法(SPH法やAMR法)に比べて欠点があまり見あたりませんが、コードが複雑になり実装が大変です。それでも岡本准教授によれば、これからチャレンジする価値は十分にあるとのことでした。

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