深まる議論、広がる知識-大規模計算による原子核研究の展開

雪に覆われた理化学研究所

1月24日(火)~25日(水)に理化学研究所和光研究所で、HPCI戦略プログラム分野5研究会「大規模計算による原子核研究の展開-核子多体系を中心に-」が開かれました。前日からの雪で、関東一円は数cmの積雪を記録。移動が困難な中、27人の講演者を含めて50人の参加がありました。

HPCI戦略プログラムは、発展し続ける計算機を積極的に生かした研究を推進、支援することを目的の一つとしています。そこで次の3つを柱にこの研究会が行われました。
1.分野5研究開発課題2「大規模量子多体系計算による核物性解明とその応用」の進展状況の報告
2.大規模計算による研究の展開が期待される萌芽的課題に関する議論
3.計算技術情報の交換

1つ目の「大規模量子多体系計算による核物性解明とその応用」について、最新の成果と数値計算の詳細が発表され、それぞれ進展が明らかになりました。軽元素合成や原子核殻模型などの発表がある一方、実験研究者からはウランまでの全元素の不安定原子核を発生させて性質を調べるRIビームファクトリーの成果紹介がありました。

萌芽的課題は今後の計算科学の発展のために重要との認識がHPCI内で共有されています。分野5の萌芽的課題を発掘する責任者の一人である中務 孝・理化学研究所准主任研究員は、「微視的シミュレーションによる核分裂ダイナミクスの解明」「第一原理核反応計算による軽元素合成過程の解明」などを含め、多数の課題がその候補にあげられると述べました。

外の寒さとは正反対で熱気が充満しています。

また情報交換という視点から、研究会の世話人である筑波大学計算科学研究センターの寺崎 順准教授は「原子核分野内の異なる課題の研究者が一つの場に集まるのは頻繁にあることではないのですが、大規模計算を軸としたことでそれが可能になりました。格子QCDや超新星爆発といった関連する分野間との接点も得られ、知識の幅を広げるのに役立ちました」と語りました。次回に向け、どこに研究会の力点をおくべきか(物理か数値計算か)といった意見を取り入れながら、来年の開催可能性を検討したいとのことでした。

カテゴリー: 新着情報, 研究会報告   パーマリンク