KEK永田桂太郎氏が第8回(2014年)日本物理学会若手奨励賞を受賞

高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所の永田桂太郎(ながた・けいたろう)研究員が、第8回(2014年)日本物理学会若手奨励賞(理論核物理領域)を受賞しました。本賞は将来の物理学を担う優秀な若手研究者の研究を奨励し、物理学会をより活性化するために設けられています。東海大学湘南キャンパスで開催された日本物理学会第69回年次大会初日の3月27日に、若手奨励賞受賞者らによる受賞記念講演が行われました。

永田氏は、格子QCDというコンピュータシミュレーション手法によって地球よりずっと高温・高密度での物質の状態や性質を研究しています。これらの解明は、私たちの宇宙を記述する理論を知る上で重要です。米国ブルックヘブン国立研究所の重イオン衝突型加速器RHICでは、実験によっても調べられています。

地球上は低温低密度(左下)で、素粒子クォークは陽子や中性子などのハドロン内に閉じ込められている。超新星内部のような高密度、宇宙初期のような高温ではクォーク・グルーオン・プラズマ状態へ相転移すると考えられている。

地球上は低温低密度(左下)で、素粒子クォークは陽子や中性子などのハドロン内に閉じ込められている。超新星内部のような高密度、宇宙初期のような高温ではクォーク・グルーオン・プラズマ状態へ相転移すると考えられている。

永田氏が本賞を受賞するにあたり対象となった研究は、”Wilson Fermion Determinant in Lattice QCD(格子QCDにおけるウィルソンフェルミオンの行列式)”。計算の途中に出てくるフェルミオン行列式の疎構造を利用して、時間成分を解析的に実行する公式を導き出しました。この公式を用いると、計算量が減るために計算効率が上がり、密度に関連する物理量の解析的な表示が得られるなどの利点があります。

簡単にいうと、永田氏の成果は符号問題に取り組むための1つの道具を作ったといえます。符号問題とは、密度がゼロではないとする条件下で格子QCDシミュレーションを行うと、計算の精度が下がったり、計算ができなくなったりする難題です。符号問題はフェルミオン行列式から発生するため、永田氏の成果から符号問題を回避する方法が開発される可能性が生まれました。

永田氏は受賞記念講演で「現状では大きい格子サイズでの計算が難しいという問題があります。今はその問題に取り組んでいます」と今後の課題について述べました。永田氏の研究が発展することで、私たちの宇宙を記述する理論への理解が深まることが期待されます。

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