競い合い、学びあう、世界中の若手研究者 - SNP School 2013 –

130214-20school-shugo2013年2月14日(水)~20日(土)の7日間、国際スクール「International School for Strangeness Nuclear Physics; SNP School 2013」が開催されました。このスクールは理論、実験、計算科学で盛んに研究が進められているハドロン物理を含む広い意味でのストレンジネス核物理の現状を、次世代の核物理学を背負って立つ強い意欲のある学生や若い研究者に講義することを目的に、前半の3日間は茨城量子ビーム研究センター(茨城県東海村)で、後半の3日間は東北大学と作並温泉でおこなわれました。12か国から73人が参加し、期間中に、HPCIセッション、ヤングセッション、茨城量子ビーム研究センターに隣接するJ-PARC※1、東北大学ELPHの見学、作並でのサマリーセッション、日光への遠足がありました。

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HPCIセッションの講師を務めた初田哲男氏

15日と、16日のHPCIセッションでは、HPCI戦略プログラム分野5のメンバーである初田 哲男(はつだ・てつお)理化学研究所主任研究員が「QCDとハドロン物理」というタイトルで合わせて3コマの講義をおこないました。ホワイトボード2台を使った白熱の講義に参加者からは「カイラリティとは何か、カイラリティとヘリシティにはどのような関係があるのか、などがとてもクリアに理解できた」、「難しくて理解できなかったことがはっきり分かった」との感想が寄せられました。

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16日のヤングセッションでは参加者全員がポスター発表に臨み、さらに選ばれた9名が口頭発表をおこないました。先に行われた口頭発表で、参加者は自分の研究について発表し、講師や他の参加者から寄せられた質問にも堂々とした様子で答えていました。続いて行われたポスターセッションでは議論が尽きることなく続きました。世話人の投票により口頭発表、ポスター発表それぞれで最も優れた参加者には橋本治※2賞が、次点にはSNP School Incentive Prizesがおくられました。橋本賞を受賞したのは、口頭発表の部が東京大学の村上洋平さん、ポスター発表の部がミュンヘン工科大学のJia-Chii Berger-Chenさん。SNP School Incentive Prizes口頭発表の部はアメリカ・カトリック大学Natalie Walfordさん、ポスター発表の部はドブナ原子核共同研究所 Anna Korotkovaさんにおくられました。

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左から東京大学の村上洋平さん、ミュンヘン工科大学のJia-Chii Berger-Chenさん、アメリカ・カトリック大学Natalie Walfordさん、ドブナ原子核共同研究所 Anna Korotkovaさん

多くの参加者が最も印象深かったと答えたのは17日に行われたJ-PARC見学と20日のELPH見学でした。初めて加速器や実験施設を見た参加者はその大きさにただただ驚いた様子でした。J-PARCではストレンジネス核物理の実験を行っているハドロン実験施設以外にも、ミュオン実験、中性子実験を行っているMLF、T2K実験を行っているニュートリノ実験施設、J-PARCの加速器で流れているビームをコントロールする中央制御棟も見学しました。普段J-PARCハドロン実験施設を利用している参加者からもMLFや中央制御棟の見学は新鮮だったという感想が聞かれました。

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ハドロン実験施設

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MLF

参加者の多くが外国人でしたので、世界遺産である日光への遠足は感動的だったようです。「日本の文化に触れ、日本が好きになった」という感想が多く寄せられました。しかしそれ以上に国際色豊かな多くの仲間と議論できたことにわくわくしたこと、またその場を提供した世話人への感謝の言葉が聞かれました。

用語解説

※J-PARC
J-PARC(Japan Proton Accelerator Research complex:大強度陽子加速器施設)は、日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)が共同で茨城県東海村に建設し、運営を行っている最先端科学研究施設。ハドロン実験施設の他、物質・生命科学実験施設、ニュートリノ実験施設と、それぞれの実験施設にビームを供給するための加速器(リニアック、3GeVシンクロトロン、メインリング)がある。

※橋本治(1947-2012)
元東北大学副学長、同大学院理学研究科・理学部教授。2012年に行われた第1回SNPスクールの校長を務める。研究や管理業務だけでなく、研究者育成にも尽力した。2012年2月3日、多くの研究者がその死を悼んだ。

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