開催報告:第2回 HPC-Phys 勉強会

2018年12月1日に理化学研究所和光 統合支援施設2階会議室で第2回HPC-Phys 勉強会が開催されました。この勉強会は計算基礎科学連携拠点(JICFuS)およびポスト「京」重点課題9「宇宙の基本法則と進化の解明」の主催です。

これは物理に軸足を置きつつ数値計算を活発に行っている研究者が集まり、計算の技術的な側面を議論する集まりの2回目です。参加者は29人。今回は午前中にGPU を積んだノートPCを持ち込んで実際に使ってみるという試みを行ないました。GPU の利用は敷居が高く思われがちですが、OpenMP や MPI を用いたプログラミングと比べて特段難しいものでありません。指示子(pragma)経由で GPU を使う OpenACC、API 経由で GPU を使う cuda の両方の解説と、これらを用いてサンプルプログラムの GPU化を行う実習を行ないました。内容を欲張り過ぎて消化不良の感は否めませんでしたが、参加者には概ね好評でした。特に OpenACC の手軽さに驚いている参加者が多かったように思います。

午後は前回同様、計算機を用いて研究している物理研究者によるいくつかの講演がありました。MPI 並列を利用する際には、通常、すべての MPI プロセスが同じ計算を行ないます(担当するデータが異なる)。石川健一さんの講演では、MPI 並列と GPU の利用を組み合わせる際に、GPU に指示を出すプロセス、CPU で計算を行うプロセスと2種類の MPI プロセスを用いる手法の実践例が、格子QCDに関するプログラムで紹介されました。シミレーションで得られた結果は、単なる数字の羅列です。我々はこれをグラフにすることは日常的に行っていますが、動画にする手法(可視化)について、超新星爆発のシミュレーションを例に滝脇知也さんから解説がありました。計算効率を上げるためには、個別の計算機に合わせたプログラムのチューニングが必要になってきます。Intel Xeon Phi Knights Landing (KNL, スパコンの Oarkforest-PACS などで採用)を用いた計算機向けに行った格子QCDでのチューニングの例を、金森逸作さんが報告しました。大規模な行列の固有値問題は、物理で現れる典型的な問題です。清水則孝さんからは、京コンピュータを用いた原子核殻模型用でのプログラム(疎行列に対する固有値問題になっています)の紹介がありました。

いずれの講演でも、物理ではなく計算手法やプログラムに関する技術的なところを中心に活発な議論がなされました。とくに計算結果を動画にまとめる可視化の手法の紹介は、研究成果を専門家向きに公表する時だけではなく、広く一般向けに伝える際にも役立つ手法であり、関心を集めていました。勉強会後に行われた懇親会でも活発に個別の議論がなされていました。

世話人の一人で会の発起人である金森さんからは「GPUの講師を引き受けて下さった松古栄夫さん、青山龍美さん、講演者の皆さん、そして参加者の皆さんに感謝します。」とコメントをいただきました。

講演資料やGPU チュートリアルでの配布資料は勉強会 web site
http://hpc-phys.kek.jp/
をご参照ください。次回は3月に広島大学で行う予定です。

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