素粒子標準模型の次を探る-計算基礎科学レクチャー

12月18日(火)に高エネルギー加速器研究機構・研究本館にて、計算基礎科学レクチャー「超対称性をもつ場の理論の格子定式化の基礎と応用」が開催されました。講師は、岡山光量子科学研究所の杉野文彦(すぎの・ふみひこ)専門研究員と、理化学研究所仁科加速器研究センターの鈴木 博(すずき・ひろし)専任研究員。2人を含む研究者や大学院生など23人が参加し、濃密な議論が行われました。

杉野文彦専門研究員

「ヒッグス粒子」とされる新粒子の発見で、素粒子の「標準模型」が完成に近づく中、標準模型の次の理論の模索が続けられています。「超対称性を持つ場の理論」は、CERNのLHC(大型ハドロン衝突型加速器)などで探し求められている理論の候補であると同時に、「超弦理論」の重要な構成要素でもあります。
CERNでは、超対称性が存在するかどうかを実験で確認しようとしています。理論的な研究においては、紙と鉛筆で計算するだけではなくて、数値シミュレーションも重要です。専門家の間では、数値シミュレーションは困難だと言われてきました。しかし、ここ数年の計算科学の発展により、様々な理論が数値シミュレーション可能であることが明らかにされ、興味深い物理が見出され始めています。

鈴木博専任研究員

計算基礎科学レクチャーは、このような現状を踏まえたうえで、今後の発展の可能性を探るために開催されました。講義は90分×4コマ、内容は大学院生レベルに合わせ、歴史的背景から最新の話題まで、非専門家にも配慮したわかりやすい解説がされました。
世話人であるKEK理論センターの花田政範(はなだ・まさのり)特任助教は、「限られた時間の中で、専門家の眼から見てもなるほどと思わせる独自の視点も随所に散りばめられたすばらしいレクチャーでした。学生からも積極的に質問が出たのも良かったと思います」と感想を述べました。また、格子QCDシミュレーションの専門家から「僕もやろうかな」という感想が聞かれるなど、この分野への新規参入を促す機会にもなりました。

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